スマホやノートPCを充電していると、「充電マークは出ているのに残量が増えない」「以前より充電が遅い」といった症状が起こることがあります。
充電できない原因には、充電器の出力不足、ケーブルの対応電力、USB PDの接続条件などが関係しています。
機器の使用状況や温度によって、充電速度が変わることもあります。
この記事では、充電できない・遅い・残量が増えないときの原因と確認方法を、USB-CやUSB PDの仕組みとともに解説します。
充電できない・遅い・増えない原因を症状別に確認する
充電トラブルは、症状によって確認するポイントが異なります。
最初に、現在の状態に近いものを確認してください。
| 症状 | 主に確認すること |
|---|---|
| まったく充電できない | 充電器の対応、ケーブル、充電端子 |
| 充電マークは出るが増えない | 供給電力、機器の消費電力、充電制御 |
| 充電が遅い | 充電器のW数、USB PD、ケーブルの対応電力 |
| 途中で充電が止まる | 温度による制御、接続状態、充電器の対応 |
| 充電しても減りが早い | バッテリーの劣化、アプリなどの消費電力 |
この表は、原因を調べるための目安です。
充電が遅い場合でも、充電器の出力不足と機器側の温度制御では確認方法が異なります。
最初に症状を確認し、充電器・ケーブル・接続機器のどこに原因があるかを調べることが重要です。
異常な発熱や焦げ臭さ、バッテリーの膨張がある場合は、原因を調べるために充電を続けず、使用を中止してください。
充電器の電力(W)が足りているか確認する
充電が遅い、残量が増えないといった症状では、充電器が供給できる電力(W)を確認します。
W(ワット)は電力を表す単位で、電圧(V)と電流(A)から計算できます。
電力(W)=電圧(V)×電流(A)
充電器の出力表示が「20V・3.25A」なら、最大出力は65Wです。
この数値は供給できる電力の上限を示しており、実際に使用される電力は接続機器や充電状態によって変わります。
スマホ用充電器でノートPCを充電するとどうなる?
ノートPCには、USB-Cで充電できる製品があります。
必要な充電電力は機種によって異なり、45Wや65Wなどの充電器を指定している製品もあります。
65Wの充電器を指定するノートPCに、20Wのスマホ用充電器を接続した場合を考えます。
充電器の出力が不足すると、次のような症状が起こることがあります。
- 充電速度が遅くなる
- 使用中にバッテリー残量が増えない
- 電源につないでいても残量が減る
- 機器が充電を開始しない
Microsoftも、PCの要求を満たさない充電器を使用すると、充電が遅くなったり、接続中でも放電したりする場合があると案内しています。[1]
W数が大きければよい?
充電器を選ぶときは、最大出力のW数に加えて、機器が必要とする電圧や充電方式に対応しているかを確認します。
同じ65Wの充電器でも、対応する出力電圧やUSB PDの仕様が異なる製品があります。
また、100W対応の充電器を使っても、スマホが常に100Wで充電されるわけではありません。
機器側の充電制御によって、実際に利用する電力が決まります。
充電器の最大出力は電力を供給できる能力を示すもので、接続機器にその電力を強制的に流すものではありません。
充電器の仕様と、機器メーカーが指定する充電条件の両方を確認してください。
USB PD・PPSの対応条件を確認する
USB-Cを使った充電では、USB Power Delivery(USB PD)が広く利用されています。
USB PDは、充電器と接続機器の間で電力供給の条件を調整するための規格です。
スマホやタブレットだけでなく、ノートPCなどの充電にも利用されています。
USB PDとは
USB PDでは、充電器と接続機器が対応する電圧や電流の条件を確認し、使用する電力を決めます。
USB-IFが定めるUSB PDでは、高出力の電力供給にも対応しており、規格上は最大240Wまで拡張されています。[2]
実際に使用できる電力は、充電器・ケーブル・接続機器の対応条件によって決まります。
充電器のラベルには、次のような出力表示があります。
| 出力表示 | 最大電力 |
|---|---|
| 5V・3A | 15W |
| 9V・3A | 27W |
| 15V・3A | 45W |
| 20V・3.25A | 65W |
これらは出力表示の読み方を示す例です。
USB PD対応充電器がすべての出力に対応しているという意味ではありません。
機器が必要とする出力に充電器が対応していれば、その条件で電力を供給できます。
「PD対応」という表示だけで判断せず、必要なV・A・Wの条件を確認することが大切です。
PPSとは
PPSは「Programmable Power Supply」の略で、USB PDに用意されている電力供給機能の1つです。
PPSでは、接続機器の要求に合わせて出力電圧を細かく調整できます。
一部のスマホでは、PPSへの対応が高速充電の条件になっています。
PPSを利用した充電には、充電器と接続機器の双方が対応している必要があります。[3]
通常のUSB PDで充電できる機器でも、PPS対応充電器を使用すると、製品が備える高速充電機能を利用できる場合があります。
USB PDとPPSの違いについては、急速充電とは?USB PD・PPSの違いと対応条件で詳しく説明しています。
USB-Cケーブルの対応電力も重要
USB-Cケーブルは、製品によって対応する電力が異なります。
USB-IFの認証制度では、USB-Cケーブルの対応電力を示す「60W」「240W」などの表示が使われています。[4]
充電器と機器が高出力充電に対応していても、ケーブルの対応電力が不足すると、利用できる電力が制限されます。
20V・3.25Aで65Wの充電を行う場合は、3Aを超える電流が必要です。
この条件では、5Aに対応したUSB-Cケーブルを使用します。
充電器を交換しても速度が改善しない場合は、ケーブルの対応電力も確認してください。
充電マークが出ているのに残量が増えない理由
充電マークが表示されていても、バッテリー残量が増えないことがあります。
主な原因は、供給電力と消費電力の関係、または機器側の充電制御です。
使用中の消費電力が大きい
ノートPCやスマホでは、画面表示やアプリの動作に電力を使用しています。
ゲームや動画編集など、処理の負荷が高い状態では消費電力が増えます。
充電器から供給される電力が機器の動作に多く使われると、バッテリーに蓄えられる電力が少なくなります。
供給電力が不足している場合は、充電マークが出ていても残量が減ることがあります。
この場合は、機器メーカーが指定する充電器を使用し、負荷の高いアプリを終了して充電状態を確認します。
ノートPCでは、スリープ中や電源を切った状態で充電すると改善する場合があります。[1]
温度によって充電が制限されている
スマホやノートPCには、バッテリーを保護するために充電を制御する仕組みがあります。
機器が高温になった場合や、低温の環境では、充電速度が低下したり一時停止したりすることがあります。
Appleも、iPhoneが高温または低温になると、充電を遅くしたり一時停止したりする機能を案内しています。[5]
機器に温度による充電制限の通知が表示されている場合は、使用環境を確認してください。
直射日光を避け、メーカーが指定する適切な温度環境で充電します。
充電上限の設定やバッテリーの劣化
スマホやノートPCには、バッテリーの劣化を抑えるために、充電上限を設定できる製品があります。
充電が80%前後で止まる場合は、機器の充電設定を確認してください。
満充電にしても短時間で残量が減る場合は、バッテリーの劣化やアプリの消費電力が関係している可能性があります。
充電が遅い症状と、充電後の減りが早い症状は、確認する項目が異なります。
充電トラブルが起きたときの確認手順
充電ができない、または充電速度が遅い場合は、次の順番で確認します。
1. 充電器の出力を確認する
最初に、機器が必要とする充電電力を確認します。
ノートPCでは、取扱説明書やメーカーの仕様表に必要なW数が記載されています。
充電器のOUTPUT表示を見て、対応する電圧・電流・電力を確認してください。
USB PD対応機器では、必要な出力条件への対応も重要です。
2. ケーブルの対応電力を確認する
充電器の出力が足りている場合は、ケーブルを確認します。
高出力充電では、ケーブル側にも対応する電流容量が必要です。
対応する仕様が確認できないケーブルは、メーカーが指定するケーブルや、対応電力が明示された製品に交換して比較します。
3. 正しい充電端子に接続する
ノートPCでは、複数のUSB-C端子が付いている場合があります。
製品によっては、USB-C端子ごとに対応する機能が異なります。
メーカーが指定する充電用端子に接続してください。
USBハブやドッキングステーションを使用している場合は、いったん外し、対応する充電器から直接接続して確認します。
USB-Cの接続条件や認識の問題は、USB-Cなのに使えないのはなぜ?充電・映像出力・認識の違いと正しい見分け方で詳しく説明しています。
4. 機器の使用状況と充電設定を確認する
充電マークが出ている場合は、負荷の高いアプリを終了し、スリープ状態などで充電速度が変わるか確認します。
温度による充電制限の通知や、充電上限の設定も確認してください。
機器の動作負荷を下げることで改善する場合は、消費電力と供給電力の関係が考えられます。
5. 改善しない場合はメーカーの案内を確認する
充電器やケーブルを交換しても改善しない場合は、機器本体の充電回路やバッテリーに問題がある可能性があります。
メーカーの診断機能や公式サポートで確認してください。
充電端子に異常がある場合は、無理にケーブルを差し込んだり、金属製の工具を使って内部を清掃したりしないでください。
充電を中止するべき症状
充電トラブルの中には、機器の故障や事故につながる異常もあります。
次の症状がある場合は、充電と使用を中止してください。
- 充電器や機器が以前より異常に熱くなる
- バッテリーや本体が膨らんでいる
- 焦げ臭い、異常なにおいがする
- 充電端子が変色・変形している
- ケーブルや端子に破損がある
- 充電中に異音や発煙が発生する
製品評価技術基盤機構(NITE)も、リチウムイオン電池を使用した製品で異常発熱、膨張、異臭などが見られた場合は、使用を中止してメーカーや販売店に相談するよう注意を呼びかけています。[6]
異常がある状態で、別の充電器を使って何度も充電を試すことは避けてください。
安全に取り外せる状態であれば電源を切り、充電を中止してメーカーへ相談します。
発煙や発火が発生した場合は、身の安全を優先し、必要に応じて119番へ通報してください。
充電器やモバイルバッテリーの発熱については、充電器やモバイルバッテリーが熱いのは問題ない?異常発熱・停止・発火リスクの判断基準で詳しく説明しています。
まとめ
充電できない、遅い、残量が増えないといった症状には、充電器の出力不足やUSB PDの対応条件、ケーブルの性能、機器側の充電制御などが関係しています。
充電器のW数だけでなく、機器が必要とする電圧・電流やUSB PD・PPSへの対応を確認することが重要です。
充電マークが出ていても、使用中の消費電力が大きい場合や、温度によって充電が制限されている場合は、残量が増えにくくなります。
確認するときは、充電器の出力、ケーブルの対応電力、充電端子、機器の使用状況の順に調べると原因を絞りやすくなります。
異常な発熱や膨張、焦げ臭さがある場合は、充電と使用を中止し、メーカーや販売店に相談してください。
参考資料
[1]Microsoft|PCの充電速度が遅い、または電源に接続していても放電中になる
充電器の出力不足、充電速度の低下、電源接続中の放電、ケーブルの対応条件について確認。
[2]USB-IF|USB Charger(USB Power Delivery)
USB PDによる電力供給の仕組みと、最大240Wへの対応について確認。
[3]USB-IF|USB-IF Introduces Fast Charging
USB PDにおけるPPSの位置付けと、充電器・接続機器の対応条件について確認。
[4]USB-IF|Cables and Connectors
USB-Cケーブルの認証制度と、60W・240Wの対応電力表示について確認。
[5]Apple|iPhoneやiPadに「充電保留中」という通知が表示される場合
温度による充電速度の制限や一時停止、充電を再開するための対応方法について確認。
[6]NITE|リチウムイオン電池搭載製品の事故
異常発熱、膨張、異臭などの危険な症状と、使用中止の判断について確認。