仕様・構造・機構

二重絶縁構造とは?2つの絶縁で感電を防ぐ仕組み

二重絶縁構造とは?のアイキャッチ

電気製品では、電気が流れる部品や配線と、人が触れる外装部分の間に、
電気が伝わらないようにする仕組みが必要です。

これを絶縁といいます。

絶縁が不十分だと、電気が流れてはいけない外装や金属部分に電気が伝わり、
感電につながる危険があります。

二重絶縁構造は、1つの絶縁だけに頼らず、2つの絶縁で感電を防ぐ構造です。

電気が流れる部分をまず絶縁し、さらにその外側にも絶縁を設けることで、
人が触れる部分へ電気が伝わるのを防ぎます。

では、普通の絶縁と何が違うのでしょうか。

この記事では、二重絶縁構造の仕組みや使われる部品、アースを必要としない理由を、
具体例とともに説明します。


二重絶縁構造とは

二重絶縁構造とは、電気が流れる部分と人が触れる部分の間に、
2つの絶縁を設けて感電を防ぐ構造です。

電気製品の内部には、電源につながる部品や配線、端子、基板などがあります。

これらの中には、人が直接触れると感電する危険のある部分もあります。

そのため、電気が流れる部分と人が触れる部分を、絶縁によって分ける必要があります。

普通の絶縁との違い

電気製品には、電気が必要な場所以外へ流れないようにする絶縁が設けられています。

例えば、電源コードでは、中の金属線をゴムや樹脂で覆っています。

この被覆によって、金属線が人の手やほかの金属部分に直接触れるのを防いでいます。

二重絶縁構造では、このような絶縁に加えて、もう1つの絶縁を設けます。

例えば、内部の配線を絶縁材で覆い、さらに外側に絶縁壁や樹脂ケースを設ける構造です。

1つ目の絶縁に不具合が起きても、もう1つの絶縁で感電を防ぐ。
これが二重絶縁構造の基本的な考え方です。

何が「二重」なのか

二重絶縁構造の「二重」は、外側にカバーが2枚あるという意味ではありません。

重要なのは、電気が流れる部分と人が触れる部分の間に、別々に働く2つの絶縁があることです。

この2つには、それぞれ名前があります。

  • 基礎絶縁:電気が流れる部分に触れて感電しないようにする基本の絶縁
  • 付加絶縁:基礎絶縁に加えて設ける、もう1つの絶縁
二重絶縁の仕組みを、通電部・基礎絶縁・付加絶縁・人が触れる外装の順に示した図
通電部と人が触れる外装の間に、基礎絶縁と付加絶縁の2つを設けて感電を防ぐ仕組み。

例えば、内部の配線を覆う被覆が基礎絶縁として働き、
その外側の樹脂ケースが付加絶縁として働く構造があります。

この場合、内側と外側の2つの絶縁によって、人が触れる部分を守っています。

ただし、絶縁材が2つ使われているだけで、二重絶縁構造になるわけではありません。

それぞれが必要な絶縁性能を持ち、別々の保護として働くように設計されていることが重要です。


基礎絶縁と付加絶縁

二重絶縁構造では、基礎絶縁と付加絶縁を組み合わせて感電を防ぎます。[1]

どちらも絶縁ですが、役割には違いがあります。

基礎絶縁とは

基礎絶縁とは、電気が流れる部分に設けられる基本の絶縁です。

例えば、次のようなものがあります。

  • 配線を覆う被覆
  • 端子の周囲に設けられた絶縁材
  • 電気部品を覆う樹脂
  • 基板上の必要な絶縁距離

身近な例では、電源コードの中にある金属線を覆うゴムや樹脂が挙げられます。

金属線がむき出しになっていると、人が触れたり、ほかの金属部分と接触したりする危険があります。

基礎絶縁は、このような接触を防ぐために設けられています。

ただし、被覆に傷が付いたり、絶縁材が熱で変形したりすると、
保護する働きが弱くなることがあります。

二重絶縁構造では、こうした不具合にも備えて、もう1つの絶縁を設けています。

付加絶縁とは

付加絶縁とは、基礎絶縁に加えて設けられる絶縁です。

基礎絶縁に不具合が起きたときにも、人が触れる部分へ電気が伝わるのを防ぐ役割があります。

例えば、次のようなものが付加絶縁として使われます。

  • 樹脂製の外装ケース
  • 内部に設けられた絶縁壁
  • 基板とケースの間に入る絶縁シート
  • 通電部と外装を分けるための構造

例えば、内部の配線を絶縁材で覆い、さらに外側に樹脂ケースを設けた製品を考えます。

配線の被覆が傷んでも、樹脂ケースが付加絶縁として働いていれば、
人が触れる部分まで電気が伝わるのを防げます。

このように、基礎絶縁と付加絶縁が別々に働くことで、二重絶縁構造が成り立ちます。

強化絶縁との違い

二重絶縁と似た仕組みに、強化絶縁があります。

二重絶縁は、基礎絶縁と付加絶縁の2つを組み合わせる方法です。

一方、強化絶縁は、この2つに分けずに、二重絶縁と同じ程度の感電保護を持たせた絶縁です。

ここでいう1つの絶縁は、必ず1枚の材料で作るという意味ではありません。

複数の絶縁材料を重ねて、1つの絶縁として働くように作る場合もあります。

違いを簡単に示すと、次のようになります。

項目二重絶縁強化絶縁
構造基礎絶縁と付加絶縁を組み合わせる1つの絶縁として必要な保護を持たせる
保護の考え方2つの絶縁で守る二重絶縁と同じ程度の保護を持たせる
アース感電防止のための保護アースに頼らない感電防止のための保護アースに頼らない

どちらも、電気が流れる部分と人が触れる部分を絶縁によって分け、感電を防ぐ方法です。


二重絶縁構造とアースの関係

電気製品では、感電を防ぐためにアースを使う方法もあります。

ここでいうアースは、感電防止のための保護アースです。

二重絶縁構造と保護アースは、どちらも感電を防ぐための仕組みですが、その方法が異なります。

アースは電気を逃がす仕組み

保護アースは、故障などによって本来電気が流れない金属部分に電気が伝わったとき、
アース線を通じて電気が流れる経路を作る仕組みです。

例えば、金属製の外装を持つ電気製品で、内部の配線が傷んで外装に触れた場合を考えます。

外装に電気が伝わると、人が触れたときに感電する危険があります。

外装が適切にアースへ接続されていれば、故障時の電流がアース線を通って流れ、
感電の危険を減らすことができます。

二重絶縁は電気が伝わるのを防ぐ仕組み

二重絶縁構造では、電気を逃がすのではなく、
人が触れる部分へ電気が伝わらないように絶縁を設けます。

電気が流れる部分の周囲に基礎絶縁を設け、
さらに付加絶縁を設けることで、感電を防ぎます。

両者の違いは次のとおりです。

  • 保護アース:故障時に電気が流れる経路を作り、感電の危険を減らす
  • 二重絶縁構造:2つの絶縁によって、人が触れる部分へ電気が伝わるのを防ぐ
保護アースと二重絶縁構造による感電防止方法の違いを示した比較図
保護アースは故障時の電気を逃がし、二重絶縁構造は通電部と外装の間を2つの絶縁で分けます。

保護アースを必要としない理由

二重絶縁または強化絶縁によって感電を防ぐ機器は、クラスII機器と呼ばれます。

クラスII機器は、感電防止を保護アースに頼らない構造で作られています。

そのため、感電防止のためにアース線を接続する必要がありません。

これは、安全対策を省いているという意味ではありません。

アースを使う代わりに、絶縁によって必要な感電保護を確保しています。

ただし、アース端子のない2極プラグが付いているだけで、クラスII機器と判断することはできません。

製品の二重絶縁マークや取扱説明書を確認します。


外装が樹脂なら二重絶縁なのか

二重絶縁構造の製品には、樹脂製の外装ケースが使われることがあります。

樹脂は電気を通しにくいため、絶縁材料として利用できます。

しかし、外装が樹脂であることだけでは、二重絶縁構造とは判断できません。

樹脂ケースだけでは判断できない

樹脂ケースは、付加絶縁として働く場合があります。

一方、製品の形を作ったり、内部の部品を保護したりするために使われているものもあります。

重要なのは、樹脂が使われているかではなく、
その樹脂が感電を防ぐ構造の中でどのような役割を持っているかです。

例えば、配線の被覆と外側の樹脂ケースが、
それぞれ基礎絶縁と付加絶縁として設計されていれば、二重絶縁構造になります。

金属部分があっても二重絶縁は成立する

二重絶縁構造の製品にも、金属製の部品が使われています。

例えば、電動工具では次のような部品があります。

  • ネジ
  • モーターの軸
  • ドリルのチャック
  • 刃
  • 補強用の金属部品

金属は電気を通しますが、金属部品が使われているだけで二重絶縁が失われるわけではありません。

人が触れられる金属部分と危険な電圧がかかる部分の間に、
必要な絶縁が設けられていることが重要です。

絶縁材料・壁・距離を組み合わせている

二重絶縁構造では、次のような方法を組み合わせて電気が流れる部分と外装を分けています。

  • 配線や部品を絶縁材料で覆う
  • 内部に絶縁壁を設ける
  • 基板とケースの間に絶縁シートを入れる
  • 部品同士に必要な距離を取る
  • 樹脂部品で通電部を固定する
  • 通電部を樹脂の中に封止する

例えば、配線の被覆が基礎絶縁として働き、
その外側の絶縁壁や樹脂ケースが付加絶縁として働く構造があります。

このように、材料や部品の配置を組み合わせて必要な絶縁を確保しています。


機器の中ではどのように作られているのか

二重絶縁構造は、製品の用途や内部の部品に合わせて作られています。

ここでは、身近なACアダプターと電動工具を例に説明します。

ACアダプターの場合

ACアダプターの内部には、コンセントから入力された電気を扱う回路があります。

人が触れる外装や出力端子に危険な電気が伝わらないよう、内部で絶縁を設けています。

例えば、次のような部分です。

  • 配線や部品を覆う絶縁材
  • 入力側と出力側を分ける絶縁
  • 基板上に設けられた必要な距離
  • 内部の絶縁壁
  • 絶縁として働く樹脂ケース

ACアダプターでは、外側のケースだけでなく、
内部の回路や部品の間にも絶縁が設けられています。

これらを組み合わせて、人が触れる部分を感電から守っています。

電動工具の場合

電動ドリルなどの電動工具には、モーター、配線、スイッチなどの電気が流れる部品があります。

使用中は、ハンドルやスイッチの周辺、本体の外装などに手が触れます。

二重絶縁構造の電動工具では、内部の通電部を絶縁し、
さらに外装や内部の絶縁部品によって人が触れる部分を守っています。

例えば、次のようなものが絶縁に使われます。

  • モーター内部の絶縁
  • 配線を覆う被覆
  • スイッチ周辺の絶縁部品
  • 通電部と外装を分ける絶縁壁
  • 絶縁として働く樹脂製のハンドルやケース

ドリルのチャックや軸など、金属部分がある製品でも、
必要な絶縁が設けられていれば二重絶縁による保護が成り立ちます。

製品によって絶縁の組み合わせは異なる

同じクラスII機器でも、内部の絶縁構造は製品によって異なります。

配線の被覆と樹脂ケースを組み合わせる製品もあれば、
内部の絶縁壁や絶縁シート、強化絶縁を利用する製品もあります。

共通しているのは、危険な電圧がかかる部分から、
人が触れる部分へ電気が伝わらないように作られていることです。


二重絶縁構造が保てなくなる状態

二重絶縁構造は、必要な絶縁材や部品が正しい位置に保たれることで機能します。

外装や内部の絶縁部品が破損すると、設計された保護が失われる場合があります。

機器が正常に動いていても、内部の絶縁が傷んでいることがあります。

外装や絶縁壁が破損した場合

樹脂ケースや内部の絶縁壁が付加絶縁として働いている製品では、
それらも感電を防ぐための重要な部品です。

例えば、次のような状態です。

  • 外装に大きなひび割れがある
  • ケースの一部が欠けている
  • ケースの合わせ目が開いている
  • 内部の絶縁壁が変形している
  • 外側から内部の部品が見えている

外装が破損すると、人が内部の通電部へ触れやすくなったり、
必要な絶縁距離が保てなくなったりします。

外装は、製品の形を作るだけでなく、感電を防ぐ絶縁として働く場合があります。

配線の被覆や絶縁部品が傷んだ場合

配線の被覆や部品の周囲にある絶縁材は、基礎絶縁として働く場合があります。

これらが傷むと、内部の金属線や通電部がほかの部品へ接触する危険があります。

例えば、次のような状態です。

  • 配線の被覆が裂けている
  • 被覆が硬くなり、ひび割れている
  • 絶縁シートがずれている
  • 絶縁部品が欠けている
  • 熱で樹脂部品が変形している

付加絶縁が残っていても、基礎絶縁が破損した状態は正常ではありません。

部品の位置が変わった場合

二重絶縁構造では、絶縁材料だけでなく、部品同士の距離も重要です。

落下や強い衝撃によって内部部品が動くと、必要な距離が保てなくなる場合があります。

例えば、次のような状態です。

  • 基板が固定位置から外れる
  • 配線が絶縁壁を越えて動く
  • 金属部品が通電部へ近づく
  • ネジや固定部品が外れる
  • ケースが変形して内部部品を押す

外側に大きな傷がなくても、内部で部品がずれている場合があります。

分解や修理で構造が変わることがある

二重絶縁構造は、配線の位置、絶縁壁、絶縁シート、
ネジやカバーなどの組み合わせによって成り立っています。

分解したあとに配線の位置を変えたり、絶縁シートを戻し忘れたりすると、
元の絶縁構造を保てません。

また、指定されていない部品やネジを使うと、必要な絶縁距離が変わる場合があります。

内部の絶縁と部品の位置まで、元の構造どおりに保つ必要があります。

見た目だけでは内部の状態まで分からない

二重絶縁構造の重要な部分は、製品の内部にあります。

そのため、外装だけを見ても、内部の絶縁が正常かどうかを確認することはできません。

一方で、外装の割れや変形、電源コードの被覆の破れなどは、外から確認できる異常です。

外装に大きなひび割れがある場合や、電源コードの被覆が破れている場合は、
使用を中止し、メーカーや修理窓口に相談してください。

二重絶縁マークは、製品が本来どのような感電保護を持つかを示すものであり、
破損した状態での安全性を示すものではありません。


二重絶縁マークとの関係

二重絶縁または強化絶縁によって感電を防ぐ機器は、クラスII機器に分類されます。

クラスII機器を示すのが、四角の中にもう1つ四角が入った二重絶縁マークです。[2]

このマークは、製品本体や電源アダプターのラベルなどに表示されています。

マークが示しているのは、内部に必ず2枚の絶縁材があるという意味ではありません。

基礎絶縁と付加絶縁を組み合わせる場合もあれば、強化絶縁を使う場合もあります。

二重絶縁マークは、クラスII機器として必要な感電保護が設けられていることを示す表示です。

マークの形や表示場所については、「二重絶縁マークとは?」の記事で詳しく説明しています。


二重絶縁構造の仕組みをまとめると

二重絶縁構造は、電気が流れる部分と人が触れる部分の間に、
別々に働く2つの絶縁を設けた構造です。

基本となる組み合わせは、基礎絶縁と付加絶縁です。

  • 基礎絶縁:電気が流れる部分に触れて感電しないようにする基本の絶縁
  • 付加絶縁:基礎絶縁に不具合が起きても感電を防ぐための絶縁

配線の被覆、絶縁壁、樹脂ケース、絶縁シートなどが、
それぞれ必要な役割を持つように組み合わされています。

二重絶縁構造で大切なのは、1つの絶縁に不具合が起きても、
もう1つの絶縁によって感電を防げることです。

また、クラスII機器では、二重絶縁と同じ程度の保護を持つ強化絶縁が使われる場合もあります。

どちらも、感電防止のための保護アースに頼らず、
絶縁によって人が触れる部分を守る仕組みです。

製品の外装が樹脂であることや、金属部品が使われていることだけでは、
内部の絶縁構造は判断できません。

クラスII機器であることは、製品本体や取扱説明書に表示された二重絶縁マークで確認します。


参考資料

[1]IEC(国際電気標準会議)|IEC 61140:2016 – Protection against electric shock – Common aspects for installation and equipment

感電を防ぐための基本原則と、基礎絶縁・付加絶縁・二重絶縁・強化絶縁の関係を確認。

[2]IEC(国際電気標準会議)|IEC 60417 – Graphical symbols for use on equipment

クラスII機器を示す図記号(記号番号5172)を確認。


関連用語

-仕様・構造・機構