電源コードの中には、
電気を流すための金属線が入っています。
その金属線がむき出しのままだと、
触れた人に電気が流れたり、
別の金属部分に触れてショートしたりします。
そこで、金属線のまわりをゴムや樹脂で覆い、
電気が外へ流れないようにしています。
電気製品の中でも同じように、
電気が流れる部分を材料で覆ったり、
部品同士を離したりしています。
本来つながらない部分へ、
電気が流れるのを防ぐためです。
このような作りが、絶縁構造です。
絶縁には、
ゴムや樹脂で覆う方法だけでなく、
セラミックをはさんだり、
部品の間に距離を取ったりする方法もあります。
使われる材料や方法は、
電圧、温度、曲げや振動、
水分などの条件によって変わります。
また、絶縁されている部分でも、
ひび割れや傷、熱による劣化が起きると、
電気を遮る性能が落ちます。
絶縁の意味や方法、使われる材料、
樹脂・ゴム・セラミックの違いまで説明します。
絶縁とは
絶縁とは、
電気が流れてほしくない場所へ流れないようにすることです。
電気製品の中では、
金属線や端子、基板上の配線などに電気が流れています。
これらが別の金属部分に触れたり、
人が触れる場所まで電気が伝わったりすると、
感電やショートの原因になります。
そこで、電気が流れる部分を
ゴムや樹脂などの材料で覆います。
電気が流れる部品同士を、
触れないように離して配置する方法もあります。
絶縁は、電気そのものを止めるのではありません。
必要な場所には電気を流し、
それ以外の場所には流れないように分ける役割があります。
電源コードでは金属線のまわりが絶縁されている

電源コードを切って中を見ると、
中心には電気を流す金属線があります。
その外側を覆っているのが、
ゴムや樹脂でできた絶縁部分です。
金属線は電気を流しますが、
外側の被覆は電気を通しにくいため、
通常はコードに触れても金属線へ直接触れません。
水道管に置き換えると、
金属線が水の通り道で、
外側の被覆が水を漏らさない管にあたります。
水道管に穴が開けば水が漏れるように、
コードの被覆が破れると、
中の金属線が露出することがあります。
その状態で触れたり、
別の金属に接触したりすると危険です。
絶縁が必要な理由
絶縁には、主に次の役割があります。
- 人が電気に触れるのを防ぐ
- 電気が別の部品へ漏れるのを防ぐ
- 金属同士が触れてショートするのを防ぐ
- 回路や部品の誤動作を防ぐ
- 発熱や発火につながる異常を防ぐ
例えば、コンセントへ差し込むプラグは、
先端の金属部分には電気が流れます。
一方で、手で持つ部分は
樹脂などで覆われています。
電気が必要な金属部分と、
人が触れる部分を分けるためです。
電気製品のケースにも、
同じ考え方が使われています。
内部には電気が流れていても、
外側のケースまで電気が伝わらないように、
材料や部品の配置が決められています。
絶縁と感電・漏電の関係
絶縁が損傷したり、劣化して性能が低下したりすると、
本来は電気が流れない部分へ電気が流れることがあります。
人が触れる金属部分などに電気が伝わり、
人体に電流が流れると感電につながります。
また、絶縁性能の低下などによって、
回路以外の金属部分や大地などへ電流が流れる状態を漏電といいます。
絶縁には、電気が流れる部分と、人が触れる部分や外部の金属部分を分け、
感電や漏電を防ぐ役割があります。
絶縁体でも電気を完全に止められるとは限らない
ゴムや樹脂、セラミックなど、
電気を通しにくい材料を絶縁体といいます。
ただし、絶縁体は、
どのような条件でも電気を通さない材料ではありません。
次のような状態では、
絶縁する力が落ちることがあります。
- 被覆に傷やひび割れがある
- 材料が熱で劣化している
- 水分や汚れが付着している
- 使用できる電圧を超えている
- 絶縁部分が薄すぎる
- 部品同士の距離が近すぎる
たとえば、乾いた樹脂の表面では
電気が流れにくくても、
水分や金属を含む汚れが付着すると、
表面を伝って電気が流れやすくなります。
また、コードの被覆が残っていても、
硬くなってひび割れていれば、
元の状態と同じ絶縁性能があるとはいえません。
絶縁されているかどうかは、
材料の名前だけでなく、状態や使い方も含めて決まります。
絶縁構造とは
絶縁構造とは、
電気が流れる部分と、流れてはいけない部分を分けるための作りです。
電気が流れる金属部分を
ゴムや樹脂で覆う方法だけではありません。
部品同士を離したり、
間に絶縁材料を入れたりする方法もあります。
たとえば電源コードでは、
金属線のまわりを絶縁材料で覆い、
電気が外へ漏れないようにしています。
コンセントプラグでは、
電気が流れる金属部分と、
手で持つ部分が分けられています。
電気製品の中でも、
金属端子や配線同士が触れないように、
位置や間隔が決められています。
絶縁構造は、
材料・厚さ・形・部品同士の距離を組み合わせて作られています。
金属部分を材料で覆う
最も身近なのは、
電気が流れる金属部分を
絶縁材料で覆う方法です。
次のような場所で使われています。
- 電源コードの被覆
- ケーブルの被覆
- プラグの持ち手
- コネクタの樹脂部分
- 熱収縮チューブ
- 絶縁テープ
金属線や端子を覆うことで、
人の手や別の金属が
直接触れにくくなります。
ただし、覆われているからといって、
どこでも同じように使えるわけではありません。
絶縁材料には、
使用できる電圧や温度があります。
何度も曲げる場所では、
曲げても割れにくい柔らかさが必要です。
屋外で使うものには、
雨や紫外線への強さも求められます。
見た目が似たコードでも、
使える場所や条件が違うのはそのためです。
部品同士を離す
電気が流れる部分同士を離すことも、
絶縁する方法の一つです。
金属同士が触れていなくても、
距離が近すぎると、
電圧によって電気が飛び移ることがあります。
そのため、基板上の配線や端子は、
使用する電圧に合わせて
間隔を空けて配置されています。
コンセントの差し込み口でも、
左右の金属部分が接触しないように、
樹脂の仕切りと距離が設けられています。
絶縁は、材料で覆うだけでなく、
電気が飛び移りにくい距離を作ることでも行われます。
間に絶縁材料を入れる
電気が流れる部分と
金属ケースや別の部品との間に、
絶縁材料を入れる方法もあります。
たとえば、次のような使い方です。
- 金属部品の間に樹脂板を入れる
- ヒーターと金属ケースの間にセラミックを入れる
- コイルの層の間に絶縁フィルムを入れる
- 基板と金属ケースの間に絶縁シートを入れる
間に入れる材料には、
電気を通しにくいこと以外の性質も必要です。
ヒーターの近くでは、
高温でも変形しにくい材料が必要です。
そのため、熱に強いセラミックが使われます。
反対に、曲げたり動かしたりする場所では、
硬いセラミックよりも、
ゴムや柔らかい樹脂が向いています。
どの材料を使うかは、
使われる場所の温度や動きによって変わります。
複数の方法を組み合わせる
実際の電気製品では、
一つの方法だけで絶縁しているとは限りません。
電源コードでは、
金属線を絶縁材料で覆い、
さらに複数の線を外側の被覆でまとめています。
電気製品の中では、
部品同士を離したうえで、
間に樹脂の仕切りを設けることもあります。
ヒーターでは、
電気が流れる発熱部分を
セラミックで支えながら、
金属ケースとの間にも距離を設けます。
このように、
- 材料で覆う
- 部品を離す
- 間に絶縁材料を入れる
- 外側を樹脂ケースで覆う
といった方法を組み合わせて、
電気が別の場所へ流れるのを防いでいます。
絶縁材料と絶縁構造の違い
絶縁材料は、
ゴムや樹脂、セラミックなどの
電気を通しにくい材料そのものです。
絶縁構造は、
その材料をどのように使うかまで含みます。
- どこに使うか
- どれくらいの厚さにするか
- どのような形にするか
- 部品同士をどれだけ離すか
- ほかの材料とどう組み合わせるか
樹脂が使われていても、
厚さが足りなかったり、
ひび割れていたりすれば、
十分に絶縁できないことがあります。
反対に、材料で覆っていなくても、
部品同士を離すことで
電気が流れないようにしている部分もあります。
絶縁材料は電気を通しにくい材料そのもの、
絶縁構造はその材料や部品の配置を含めた作り全体です。

絶縁に使われる材料
絶縁には、
電気を通しにくい材料が使われます。
ただし、電気を通しにくければ、
どの材料を使ってもよいわけではありません。
電源コードには、
繰り返し曲げても割れにくい柔らかさが必要です。
ヒーターの近くでは、
高い温度に耐えられなければなりません。
電気製品のケースやコネクタには、
細かな形を作りやすく、
部品を支えられる強さも必要です。
使われる場所によって、
絶縁材料に求められる性質は変わります。
主な絶縁材料は、次のとおりです。
- 樹脂
- ゴム
- セラミック
- ガラス
- マイカ
- 絶縁紙
- 絶縁フィルム
- 絶縁ワニス
- 絶縁油
この中でも、
身近な電気製品でよく使われているのが、
樹脂・ゴム・セラミックです。
樹脂は形を作りやすく軽い
樹脂は、
電気を通しにくく、
さまざまな形に加工しやすい材料です。
コンセントプラグの持ち手や、
コネクタの硬い部分、
電気製品のケースなどに使われています。
樹脂絶縁の主な用途は、
次のとおりです。
- 電子基板の絶縁
- コイルの絶縁
- 電子部品の樹脂封止
- 電気製品のケース
- コネクタの絶縁部分
液体状の樹脂を
電子部品のまわりへ流し込み、
固めて覆う方法もあります。
これをモールド絶縁や
樹脂封止といいます。
部品を樹脂の中へ
埋め込むようにして覆う方法です。
電気が別の部分へ流れるのを防ぐだけでなく、
部品を固定したり、
水分やほこりが入りにくくしたりする役割もあります。
ただし、樹脂で覆われているだけで、
防水とは判断できません。
水に対応しているかどうかは、
製品に表示された防水性能を確認します。
代表的な樹脂には、
次のものがあります。
- エポキシ樹脂
- ポリエステル樹脂
- フェノール樹脂
- ポリカーボネート
- ポリプロピレン
エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、
フェノール樹脂は、
一度固まると、加熱しても
元のように柔らかくなりにくい樹脂です。
このような樹脂を
熱硬化性樹脂といいます。
ポリカーボネートやポリプロピレンは、
熱を加えると柔らかくなり、
冷えると再び固まる樹脂です。
こちらは熱可塑性樹脂と呼ばれます。
同じ樹脂でも、
熱への強さや硬さ、
薬品への強さは種類によって違います。
エポキシ樹脂の一例として、
次のような数値があります。
- 密度:約1.1~1.3g/cm³
- 使用温度範囲:約-40~120℃
- 絶縁耐力:約15~25kV/mm
絶縁耐力とは、
材料の中を電気が突き抜けるまで、
どれくらいの電圧に耐えられるかを表す数値です。
15~25kV/mmは、
厚さ1mmあたり
約15,000~25,000Vを表します。
日本の家庭で使われる電圧は、
通常100Vまたは200Vです。
200Vと比べると、
15,000Vは75倍、
25,000Vは125倍にあたります。
試験では、材料を2枚の金属ではさみ、
少しずつ電圧を上げます。
そして、どの電圧で
材料の中を電気が突き抜けるかを調べます。
その結果を、
材料の厚さ1mmあたりの数値で表したものが
絶縁耐力です。
製品を何Vで使えるかは、
材料の絶縁耐力ではなく、
製品に表示された定格電圧で確認します。
ゴムは曲げる場所に向いている
ゴムは柔らかく、
伸ばしたり曲げたりしても、
元の形へ戻ろうとする材料です。
そのため、電源コードやケーブルなど、
動かしたり曲げたりする場所の
絶縁に向いています。
ゴム絶縁は、
次のような場所で使われています。
- 電源コードの被覆
- ケーブルの絶縁
- 可動部分の配線
- 電気部品の絶縁カバー
- 電気作業用の絶縁手袋
電源コードは、
使うたびに曲げられたり、
引っ張られたりします。
硬くて曲がりにくい材料だけで覆うと、
曲がる部分に力が集中し、
ひび割れや破損の原因になります。
ゴムには柔らかさがあるため、
曲げや振動を受ける場所でも
形を保ちやすくなります。
代表的なゴムには、
次のものがあります。
- 天然ゴム
- SBRなどの合成ゴム
- シリコーンゴム
天然ゴムは、
仕様書で「NR」と
表示されることがあります。
NRは、
Natural Rubberの略です。
SBRは、
人工的に作られる合成ゴムの一種です。
シリコーンゴムは、
天然ゴムよりも
高温や低温に強い性質があります。
そのため、熱が加わる配線や、
温度変化の大きい場所にも使われます。
天然ゴムの一例として、
次のような数値があります。
- 密度:約0.92g/cm³
- 使用温度範囲:約-30~80℃
- 絶縁耐力:約15~20kV/mm
同じゴムでも、
種類や混ぜられている材料によって、
対応できる温度や環境は変わります。
見た目が似た電源コードでも、
- 屋内用
- 屋外用
- 耐熱用
- 耐油用
では、使える場所が違います。
セラミックは熱に強く硬い
セラミックは、
金属や樹脂とは異なる無機材料を、
主に高温で焼き固めて作る材料です。
陶器や磁器もセラミックの仲間ですが、
電気部品には、工業用に作られた
セラミックが使われています。
電気を通しにくく、
熱にも強いため、
高温になる場所の絶縁に向いています。
セラミック絶縁は、
次のような場所で使われています。
- ヒーターの絶縁
- 高温になる電気部品
- 電力機器の絶縁体
- 電子部品の基板
- 絶縁スペーサー
絶縁スペーサーは、
部品同士の間に入れて、
接触しないように支える部品です。
電気を遮りながら、
部品を決められた位置に保ちます。
代表的なセラミックには、
次のものがあります。
- アルミナ
- ジルコニア
- 窒化アルミニウム
この中でも、
電気部品によく使われているのがアルミナです。
アルミナは、
アルミニウムと酸素が結びついた化合物です。
化学式では、
Al₂O₃と表します。
名前にアルミニウムと入っていますが、
金属のアルミニウムそのものではありません。
粉末状の原料を形にして、
高温で焼き固めることで、
硬くて熱に強いセラミックになります。
仕様書では、
- Alumina
- Al₂O₃
- Ceramic Insulator
などと表示されることがあります。
アルミナの一例として、
次のような数値があります。
- 密度:約3.9g/cm³
- 融点:約2050℃
- 熱伝導率:約20~30W/m・K
- 絶縁耐力:約10~20kV/mm
熱伝導率は、
材料の中を熱がどれくらい伝わりやすいかを表す数値です。
数値が高いほど、
一か所にたまった熱を
ほかの部分へ伝えやすくなります。
たとえば、熱を出す電子部品を
アルミナ製の基板に取り付けると、
電気を遮りながら、
部品の熱を周囲へ逃がせます。
セラミックは熱に強い一方で、
ゴムのようには曲がりません。
硬く、変形しにくい反面、
強い衝撃を受けると
欠けたり割れたりします。
セラミック部分に
割れや大きな欠けがある場合は、
使用を中止します。
ガラスは繊維や基板にも使われる
ガラスも、
電気を通しにくい材料です。
窓に使われる板ガラスだけでなく、
細い糸のようにしたガラス繊維も
絶縁材料として使われています。
代表的なものが、
ガラス繊維と樹脂を組み合わせた
ガラスエポキシ基板です。
パソコンや家電の中にある
緑色の基板には、
ガラスエポキシ基板がよく使われています。
ガラス繊維で強度を持たせ、
樹脂で固めることで、
電気を遮りながら
電子部品を支えています。
マイカは熱に強い薄い材料
マイカは、
日本語で雲母と呼ばれる鉱物です。
薄い層にはがれやすく、
電気を通しにくいうえ、
熱にも強い性質があります。
薄い板やシートにして、
ヒーターやモーターなどの
絶縁に使われます。
身近なところでは、
電子レンジの庫内にある
薄い板にも使われています。
この板は、
庫内の汚れが奥にある部品へ入るのを防ぎながら、
電子レンジで使われる電波を通すカバーです。
汚れたり破れたりしても、
普通の紙や樹脂板では代用できません。
交換するときは、
電子レンジに対応した部品を使います。
絶縁紙は普通の紙とは違う
紙も、
電気を通しにくい材料として使われます。
ただし、電気部品に使われる絶縁紙は、
コピー用紙や包装紙とは違います。
厚さや強度、
熱への強さなどが管理された
電気用の紙です。
主に次のような場所で使われます。
- モーター
- コイル
- 変圧器
- 巻線同士の間
- 部品と金属部分の間
絶縁紙は水分を吸うと、
電気を遮る力が落ちやすくなります。
そのため、樹脂を染み込ませたり、
絶縁油と組み合わせたりして使われます。
絶縁フィルムは薄い場所に入れやすい
絶縁フィルムは、
薄いシート状に作られた樹脂材料です。
厚い樹脂板を入れられない場所でも、
薄いフィルムなら
部品の間へ入れられます。
代表的な材料は、
次のとおりです。
- ポリエステル
- ポリイミド
- ポリプロピレン
- フッ素樹脂
絶縁フィルムは、
コイルの層の間や、
電子部品、バッテリーなどで使われます。
薄くても、しわや破れ、
小さな穴があると、
その部分から電気が流れる原因になります。
どの材料を使うかだけでなく、
入れる位置や重なり方も重要です。
絶縁ワニスはコイルを絶縁して固定する
絶縁ワニスは、
コイルなどに塗ったり染み込ませたりして使う材料です。
乾かして固めることで、
絶縁を助けながら、
コイルの線や部品を固定します。
線が振動で動いたり、
こすれて傷ついたりするのを
防ぐ役割もあります。
また、モーターや変圧器のコイルには、
細い銅線の表面を絶縁膜で覆った
エナメル線が使われています。
銅線同士が接していても、
表面の絶縁膜によって、
直接電気が流れないようにしています。
絶縁ワニスやエナメル線の絶縁膜は、
どちらも薄いものです。
傷や剥がれが起きると、
その部分の絶縁性能が下がります。
絶縁油は電気を遮りながら熱も逃がす
絶縁には、
固体だけでなく液体も使われます。
代表的なものが、
変圧器などに使われる絶縁油です。
絶縁油には、
次のような役割があります。
- 電気が別の部品へ流れるのを防ぐ
- 部品の熱を外へ逃がす
- 絶縁紙のすき間に入り、絶縁を助ける
家庭で使う食用油とは、
性質も用途も違います。
絶縁油は、
電気を通しにくいことや、
電気機器の中で使えることが確認された
専用の液体です。
一つの製品に複数の材料が使われる
電気製品の中では、
一種類の絶縁材料だけを
使っているとは限りません。
たとえばヒーターでは、
高温になる部分にセラミックを使い、
外側のコードには
曲げやすいゴムや樹脂を使います。
電子基板では、
ガラス繊維と樹脂を組み合わせ、
コイルには絶縁膜で覆われた
エナメル線を使います。
使われる場所によって、
必要な性質が違うためです。
- 曲げる場所にはゴム
- 形を作る場所には樹脂
- 高温になる場所にはセラミック
- 薄いすき間には絶縁フィルム
- コイルの固定には絶縁ワニス
絶縁材料は、使う場所の温度や動き、形に合わせて選ばれ、
一つの製品の中でも場所によって使い分けられています。

樹脂・ゴム・セラミックの違いをまとめると、
次のようになります。
| 材料 | 主な特徴 | 向いている場所 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 樹脂 | 軽く、細かな形を作りやすい | ケース、コネクタ、基板、電子部品 | 熱や紫外線、薬品で劣化する |
| ゴム | 柔らかく、曲げや振動に強い | 電源コード、ケーブル、可動部分 | 熱、油、紫外線などで傷む |
| セラミック | 硬く、高い温度に強い | ヒーター、高温部品、基板 | 衝撃や曲げで割れやすい |
絶縁性能が低下する原因
絶縁材料は、
使い続けても同じ状態が保たれるとは限りません。
熱や水分、紫外線などの影響を受けると、
硬くなったり、ひびが入ったりして、
電気を遮る力が落ちます。
見た目に大きな変化がなくても、
内部で劣化が進んでいることもあります。
熱による劣化
電気製品の中では、
モーターやヒーター、電子部品などから
熱が発生します。
その熱を長く受け続けると、
樹脂やゴムの性質が変わります。
樹脂では、
- 変色する
- 変形する
- 硬くなる
- もろくなる
- ひびが入る
といった変化が起こります。
ゴムでは、
柔らかさが失われて硬くなったり、
表面がひび割れたりします。
たとえば、古い電源コードを曲げたときに、
表面が白くなったり、
細かなひびが見えたりすることがあります。
これは、被覆が傷んでいるサインです。
セラミックは高温に強い材料ですが、
急に熱くなったり冷えたりすると、
温度差によってひびが入ることがあります。
紫外線による劣化
屋外で使うコードや樹脂部品は、
太陽光に含まれる紫外線の影響を受けます。
長い間、紫外線を受け続けると、
樹脂やゴムの表面が変色し、
硬くなったり割れやすくなったりします。
屋内用の延長コードを
屋外へ出したまま使うと傷みやすいのは、
雨だけでなく紫外線の影響も受けるためです。
屋外で使うものは、
屋外用と表示された製品を選びます。
水分や汚れによる影響
絶縁材料そのものが
電気を通しにくくても、
表面に水分や汚れが付くと状態が変わります。
特に、
- 結露
- 雨水
- 塩分
- 金属粉
- 油汚れ
- ほこり
などが付着すると、
表面を電気が流れやすくなります。
たとえば、乾いた樹脂板では
電気が流れにくくても、
水分とほこりが混ざって表面に付くと、
電気の通り道ができることがあります。
本来は電気が流れない絶縁部分などを通って、
電気が漏れるように流れることがあります。
この電流を、漏れ電流といいます。
絶縁材料の表面に電気が流れ続けると、
表面が焦げたり、
電気の通り道が残ったりすることがあります。
表面トラッキング
水分や汚れが付いた絶縁材料の表面に
電気が流れ続けると、
焦げた筋のような跡ができることがあります。
この現象を、
トラッキングといいます。
焦げた部分は、
元の樹脂より電気が流れやすくなります。
そのまま電気が流れ続けると、
汚れや水分が付く
↓
表面に電気が流れる
↓
樹脂が焦げる
↓
焦げた部分に電気が流れやすくなる
↓
発熱や発火につながる
という流れで悪化します。
コンセントプラグと差し込み口の間に
ほこりがたまった状態で湿気を含むと、
トラッキングが起こる原因になります。
プラグの根元やコンセントに、
- 黒い汚れがある
- 焦げた跡がある
- 変色している
- 異常に熱くなる
といった変化がある場合は、
使用を中止します。
油や薬品による劣化
ゴムや樹脂の中には、
油や薬品に触れると
柔らかくなったり膨らんだりするものがあります。
材料が液体を吸って膨らむことを、
膨潤といいます。
見た目では、
- 表面がふくらむ
- ベタつく
- 柔らかくなる
- 形が崩れる
といった変化が現れます。
工場や自動車の周辺など、
油が付く場所では、
耐油性のあるコードや部品が必要です。
家庭でも、
電源コードへ油や洗剤が付いたままになると、
被覆が傷むことがあります。
オゾンによる劣化
一部のゴムは、
空気中のオゾンによって
細かなひびが入りやすくなります。
オゾンは、
モーターや高電圧を扱う機器の近くで
発生することがあります。
ゴムが引っ張られた状態で
オゾンの影響を受けると、
表面に細い亀裂が並ぶことがあります。
この傷み方を、
オゾン劣化といいます。
曲げや振動による劣化
電源コードやケーブルは、
電気を流すだけでなく、
曲げや引っ張りにも耐える必要があります。
同じ場所を何度も折り曲げると、
外側の被覆だけでなく、
内部の金属線も傷みます。
特に傷みやすいのは、
- プラグの根元
- 機器につながる部分
- ドライヤーや掃除機のコード
- 扉や家具にはさまれる部分
- コードを強く巻き付ける部分
です。
外側に異常がなくても、
内部の線が切れかけると、
角度によって電源が入ったり切れたりします。
コードを動かしたときに
電源が途切れる場合は、
そのまま使い続けないようにします。
衝撃による破損
セラミックは硬く、
押しても変形しにくい材料です。
その反面、
強い衝撃や曲げには弱く、
欠けたり割れたりします。
落下や取り付け時の締めすぎで、
目に見えない細かなひびが入ることもあります。
ひびが入ると、
部品を支える強さが落ちるだけでなく、
絶縁するための厚さや距離も変わります。
樹脂部品も、
落下や強い力によって
割れたり変形したりします。
絶縁材料ごとに傷み方が違う
樹脂・ゴム・セラミックでは、
起こりやすい劣化が違います。
| 材料 | 主な劣化の原因 | 現れやすい変化 |
|---|---|---|
| 樹脂 | 熱、紫外線、薬品、汚れ | 変色、変形、ひび、焦げ |
| ゴム | 熱、紫外線、油、オゾン、曲げ | 硬化、ベタつき、膨らみ、ひび |
| セラミック | 衝撃、曲げ、急な温度変化 | 欠け、割れ、ひび |
絶縁部分に異常があるかを見るときは、
材料に合わせて確認する場所も変わります。
樹脂なら変色や焦げ、
ゴムなら硬化やひび、
セラミックなら欠けや割れを確認します。
絶縁材料が残っていても、
傷んでいれば元の性能を保っているとは限りません。
絶縁性能を見るときに出てくる数値
製品の仕様書には、
絶縁に関する数値が書かれていることがあります。
よく出てくるのは、
次のような項目です。
- 定格電圧
- 耐電圧
- 絶縁抵抗
- 空間距離
- 沿面距離
どれも絶縁に関係しますが、
表している内容は同じではありません。
定格電圧は普段使える電圧
定格電圧は、
製品を使用するときの基準となる電圧です。
たとえば、電気製品に
- AC100V
- AC100~240V
- DC12V
などと表示されていれば、
その製品が対応する電圧を表しています。
日本の家庭用コンセントは、
通常100Vまたは200Vです。
100V専用の製品を
200Vのコンセントにつなぐことはできません。
AC100~240Vと表示された製品なら、
その範囲の電圧に対応しています。
製品を接続できるか確認するときは、
まず定格電圧を見ます。
耐電圧は高い電圧に耐えられるかを表す
耐電圧は、
絶縁部分が高い電圧に耐えられるかを示す項目です。
耐電圧試験では、
絶縁部分に高い電圧を加えて、
電気が漏れたり壊れたりしないかを確かめます。
仕様書では、
次のように書かれることがあります。
- AC1,500V 1分間
- AC3,000V 1分間
- DC500V 1分間
たとえば、定格電圧が100Vの製品でも、
耐電圧試験では1,500Vなどの
高い電圧を加えることがあります。
普段使う100Vとは別に、
絶縁が高い電圧に耐えられるかを
確かめるためです。
定格電圧と耐電圧の違いは、
次のようになります。
- 定格電圧:普段使用する電圧
- 耐電圧:試験で一時的に加える電圧
耐電圧に1,500Vと書かれていても、
その製品を1,500Vで使用するわけではありません。
絶縁抵抗は電気の漏れにくさを表す
絶縁材料は電気を通しにくいものの、
ごくわずかな電気が流れることがあります。
この電気の漏れにくさを
抵抗値で表したものが、
絶縁抵抗です。
仕様書では、
- 100MΩ以上
- 500MΩ以上
- 1GΩ以上
などと表示されます。
MΩはメガオーム、
GΩはギガオームと読みます。
- 1MΩ=1,000,000Ω
- 1GΩ=1,000MΩ
基本的には、
数値が大きいほど
電気が漏れにくいことを表します。
ただし、絶縁抵抗は
数値だけを見て比べるものではありません。
測定するときの電圧や、
どの端子間を測ったかによって
結果が変わるためです。
仕様書では、
- 測定電圧
- 測定する場所
- 最低限必要な数値
を合わせて確認します。
空間距離は空気中の最短距離
電気が流れる部分同士は、
触れていなければよいとは限りません。
電圧が高くなると、
空気中を飛び越えて
電気が流れることがあります。
そこで、部品同士の間に
必要な距離を設けます。
空気中をまっすぐ測った
最短距離を空間距離といいます。
たとえば基板では、
2本の金属配線が並んでいても、
電圧に合わせて間隔が空けられています。
空間距離は、
電気が空気中を飛び越えにくくするための距離です。
沿面距離は材料の表面に沿った距離
電気は、空気中だけでなく、
絶縁材料の表面に沿って
流れることもあります。
絶縁材料の表面に沿って測る距離を、
沿面距離といいます。
たとえば、2つの金属端子の間に
樹脂の仕切りがあるとします。
空気中をまっすぐ測るのが空間距離です。
樹脂の表面に沿って測るのが
沿面距離です。
- 空間距離:空気中を測る
- 沿面距離:絶縁材料の表面に沿って測る
樹脂の表面に水分やほこりが付くと、
表面を電気が流れやすくなります。
そのため、沿面距離は
水分や汚れの影響も考えて決められます。
数値はそれぞれ見る場所が違う
絶縁に関する数値は、
一つだけ見ればよいものではありません。
- 使用する電圧は定格電圧
- 高い電圧への耐性は耐電圧
- 電気の漏れにくさは絶縁抵抗
- 空気中を飛び越えにくくするのが空間距離
- 表面を伝わりにくくするのが沿面距離
同じ絶縁について書かれていても、
それぞれ確認している内容が違います。
製品を何Vで使えるか確認するときは、
耐電圧や絶縁耐力ではなく、
製品に表示された定格電圧を見ます。
絶縁は一つだけとは限らない
電気製品では、
一つの絶縁だけで安全を保っているとは限りません。
最初の絶縁が傷んだときに備えて、
別の絶縁を追加している製品もあります。
絶縁の役割によって、
次のような呼び方があります。
- 基礎絶縁
- 付加絶縁
- 二重絶縁
- 強化絶縁
名前だけでは違いが分かりにくいため、
電気が流れる部分と、
人が触れる部分の関係で考えると分かりやすくなります。
基礎絶縁は最初に電気を遮る絶縁
基礎絶縁は、
感電を防ぐために設けられる
基本となる絶縁です。
たとえば電源コードでは、
中にある金属線のまわりを
樹脂やゴムが覆っています。
この被覆によって、
電気が外へ流れにくくなっています。
電気製品の内部でも、
電気が流れる部品と外側のケースの間に
樹脂や絶縁シートが使われます。
このように、
普段の使用中に電気へ触れないようにする
最初の絶縁が基礎絶縁です。
ただし、基礎絶縁が一か所傷むと、
それだけでは電気を遮れなくなることがあります。
そこで、さらに別の絶縁を加える方法があります。
付加絶縁は故障に備えて追加する絶縁
付加絶縁は、
基礎絶縁が壊れたときに備えて
追加される絶縁です。
たとえば、電気が流れる部品を
最初の樹脂で覆ったうえで、
外側にも絶縁性のあるケースを設けます。
内側の絶縁が傷んでも、
外側のケースが残っていれば、
人が電気へ触れるのを防げます。
- 内側の絶縁が基礎絶縁
- 外側に追加された絶縁が付加絶縁
という関係です。
付加絶縁は、
同じ部分を厚くしただけとは限りません。
別の材料やケース、
部品同士の距離によって
追加の保護を作ることもあります。
二重絶縁は二つの絶縁で保護する
二重絶縁は、
基礎絶縁と付加絶縁を
組み合わせた絶縁構造です。
たとえば、電気が流れる部品を
絶縁材料で覆い、
さらに外側を樹脂ケースで囲みます。
内側と外側の両方で、
人が電気へ触れないようにしている形です。
身近なものでは、
電動工具やドライヤーなどに
二重絶縁が使われている製品があります。
二重絶縁の製品には、
四角の中にもう一つ四角が入った
マークが表示されることがあります。
このマークは、
絶縁材料を単純に二枚重ねた、
という意味ではありません。
一つの絶縁が故障しても、
別の絶縁で感電を防げるようにした構造を表します。
強化絶縁は一つの構造で高い保護を持たせる
強化絶縁は、
二重絶縁と同じ程度の保護を
一つの絶縁構造で持たせたものです。
見た目では、
絶縁が二層に分かれていないこともあります。
厚さや材料、部品同士の距離などを
まとめて設計し、
高い絶縁性能を持たせます。
そのため、
- 一層に見えるから基礎絶縁
- 二層に見えるから二重絶縁
とは判断できません。
どの絶縁にあたるかは、
見た目だけではなく、
製品の設計や試験によって決まります。
二重絶縁とアースは役割が違う
感電を防ぐ方法には、
絶縁だけでなくアースもあります。
アースは、
故障によって金属ケースへ電気が流れたときに、
その電気をアース線へ流し、感電を防ぐためのものです。
一方、二重絶縁は、
電気が人の触れる部分へ届かないように
絶縁を重ねて守る方法です。
- 二重絶縁:電気が外へ出ないようにする
- アース:漏れた電気を地面側へ逃がす
感電を防ぐ目的は同じですが、
仕組みは違います。
製品によって使われる方法が異なるため、
アース端子がある製品では、
説明書に従って接続します。
見た目だけでは絶縁の種類は分からない
樹脂ケースで覆われている製品でも、
それだけで二重絶縁とは限りません。
ケースの内側に、
- どのような絶縁材料があるか
- どれくらいの厚さがあるか
- 部品同士がどれくらい離れているか
- どのような試験に合格しているか
によって、絶縁構造は変わります。
外から見える材料だけでは、
基礎絶縁、二重絶縁、強化絶縁の
どれにあたるかは判断できません。
二重絶縁などの表示がある場合は、
製品のマークや仕様書で確認します。
絶縁部分を確認するときのポイント
絶縁の状態は、
外から見ただけで正確に測れるものではありません。
家庭で確認できるのは、
製品の表示と、目に見える異常です。
確認するポイントは、次の3つです。
- 定格電圧や使用できる温度、場所を確認する
- コードやケースに傷、ひび、焦げ、変形がないか見る
- 異常がある場合は使用を中止する
樹脂やゴムで覆われていても、
傷んでいれば元の絶縁性能を保てないことがあります。
材料の種類だけでなく、
製品の表示と実際の状態を確認します。
まとめ
絶縁とは、
電気が流れてはいけない場所へ流れないようにすることです。
電気が流れる金属部分を
樹脂やゴムで覆うだけでなく、
部品同士を離したり、
間に絶縁材料を入れたりする方法もあります。
絶縁に使われる主な材料は、
次のとおりです。
- 樹脂
- ゴム
- セラミック
- ガラス
- マイカ
- 絶縁紙
- 絶縁フィルム
- 絶縁ワニス
- 絶縁油
どの材料を使うかは、
温度や動き、必要な形によって変わります。
また、絶縁性能を見る数値には、
定格電圧、耐電圧、絶縁抵抗、
空間距離、沿面距離があります。
それぞれ表している内容は違います。
製品を何Vで使えるかを見るときは、
製品に表示された定格電圧を確認します。
絶縁材料が使われていても、
熱や水分、紫外線、曲げ、衝撃などで
性能が低下することがあります。
コードやケースに傷、ひび、焦げ、
変形などがある場合は、
使用を中止します。
絶縁構造は、材料の名前だけではなく、
厚さや形、部品同士の距離まで含めた作り全体です。